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東京地方裁判所 昭和62年(ワ)10946号 判決 1989年9月18日

原告

日本水槽工業株式会社

被告

第一水槽株式会社

右当事者間の昭和62年(ワ)第10946号実用新案権侵害差止等請求事件について、当裁判所は、次のとおり判定する。

主文

一  被告は、原告に対し,二六七八万円及びこれに対する昭和62年8月30日から支払済みに至るまで年五分の割合による金員を支払え。

二  原告のその余の請求を棄却する。

三  訴訟費用は、被告の負担とする。

四  この判決は、原告勝訴部分に限り、仮に執行することができる。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  主文一及び三同旨

2  被告は別紙目録(一)ないし(三)記載の水槽を製造し、使用し、貸し渡し、譲渡若しくは貸渡のために展示してはならない。

3  仮執行宣言

二  請求の趣旨に対する答弁

1  原告の請求を棄却する。

2  訴訟費用は、原告の負担とする。

第二当事者の主張

一  請求の原因

1  原告は、次の実用新案権(以下「本件実用新案権」といい、その考案を「本件考案」という。)を有している。

考案の名称 飼育用ガラス水槽

出願年月日 昭和49年7月16日

出願番号 実願昭49―83408号

出願公告年月日 昭和53年8月4日

出願公告番号 実公昭53―31277号

登録年月日 昭和54年1月30日

実用新案登録番号 第1272477号

2  本件考案の実用新案登録請求の範囲は、本判決添付の登録実用新案審判請求公告及び実用新案公報の訂正の該当項記載のとおりであつて、その構成要件は、次のとおりである。

A 周縁に上縁挿入溝を形成した上枠と、周縁に外側突出壁を有する下枠と、四枚の側面ガラスとを有し、

B 四枚の側面ガラスの上縁を上記上枠の上縁挿入溝に挿入するとともに下縁を上記下枠の外側突出壁で止めて接着剤で固定し、

C 各側面ガラスの側面切口を隣りの側面ガラスの側面切口と直角状に対向させ、

D 隣り合う側面ガラスの夫々の外縁に被さる側辺を有して長さが上枠と下枠との対向間隔に等しく、かつ、上記側辺間にあつて側面ガラスの側面切口か直角状に対向する部分に突出する突条を長さ方向に沿い設けたプラスチツクの保護柱を

E 側面ガラスの側面切口が直角状に対向する部分に充填した接着剤の外側に設けた

F 飼育用ガラス水槽。

3  被告は、別紙目録(一)ないし(三)記載の水槽(以下順次「被告製品(一)」、「被告製品(二)」、「被告製品(三)」といい、その全部を「被告製品」という。)を製造し、使用し、譲渡し、貸し渡し、譲渡若しくは貸渡のために展示している。そして、被告製品の構造は、次のとおりである。

(一) 被告製品(一)

a 周縁に上縁挿入溝6を形成した上枠1と、周縁に外側突出壁5を有する下枠2と、四枚の側面ガラス3とを有し、

b 四枚の側面ガラス3の上縁を上記上枠1の上縁挿入溝6に挿入するとともに下縁を下枠2の外側突出壁5で止めて接着剤a、cで固定し、

c 各側面ガラス3の側面切口3'を隣りの側面ガラス3の側面切口3'と直角状に対向させ、

d 隣り合う側面ガラス3の夫々の外縁に被さる側辺10を有して長さが上枠1と下枠2との対向間隔Lに等しく、かつ、上記側辺10間にあつて側面ガラス3の側面切口3'が直角状に対向する部分に突出する突条11を長さ方向に沿い設けたプラスチツクの保護柱9を、

e 側面ガラス3の側面切口3'が直角状に対向する部分に充填した接着剤dの外側に設けた

f 飼育用ガラス水槽。

(二) 被告製品(二)

a 周縁に上縁挿入溝6を形成した上枠1と、周縁に外側突出壁5を有する下枠2と、四枚の側面ガラス3とを有し、

b 四枚の側面ガラス3の上縁を上記上枠1の上縁挿入溝6に挿入するとともに下縁を下枠2の外側突出壁5で止めて接着剤a、cで固定し、

c 各側面ガラス3の側面切口3'を隣りの側面ガラス3の側面切口3'と直角状に対向させ,

d 隣り合う側面ガラス3の夫々の外縁に被さる側辺10を有して長さが上枠1と下枠2との対向間隔Lに等しく、かつ、上記側辺10間にあつて側面ガラス3の側面切口3'が直角状に対向する部分に突出する突条11を長さ方向に沿い設けたプラスチツクの保護柱9を、

e 側面ガラス3の側面切口3'が直角状に対向する部分に充填した接着剤dの外側に設けた

f 飼育用ガラス水槽。

(三) 被告製品(三)

a 周縁に上縁挿入溝6を形成した上枠1と、周縁に外側突出壁5を有する下枠2と、四枚の側面ガラス3とを有し、

b 四枚の側面ガラス3の上縁を上記上枠1の上縁挿入溝6に挿入するとともに下線を下枠2の外側突出壁5で止めて接着剤a、cで固定し、

c 各側面ガラス3の側面切口3'を隣りの側面ガラス3'と直角状に対向させ、

d 隣り合う側面ガラス3の夫々の外縁に被さる側辺10を有して長さが上枠1と下枠2との対向間隔Lに等しく、かつ、上記側辺10間にあつて側面ガラス3の側面切口3'が直角状に対向する部分に突出する突条11を長さ方向に沿い設けたプラスチツクの保護柱9を、

e 側面ガラス3の側面切口3'が直角状に対向する部分に充填した接着剤dの外側に設けた

f 飼育用ガラス水槽。

4  被告製品(一)ないし(三)の構造の各aないしfは、本件考案の構成要件AないしFに該当するので、被告製品は、本件考案の技術的範囲に属する。

5  被告は、法律上の原因なくして、昭和57年11月頃から同62年7月末までの間に、被告製品(一)六万七五〇〇台を一億三〇七五万円で、被告製品(二)二〇万六〇〇〇台を三億八四〇〇万円でそれぞれ販売し、また、昭和59年頃から同62年7月末までの間に、被告製品(三)八五〇〇台を五八五〇万円で販売し、右販売高合計五億七三二五万円の五パーセントに当たる実施料相当額二八六六万二五〇〇円の利益を受け、原告に同額の損失を及ぼした。

6  よつて、原告は、被告に対し、本件実用新案権に基づき、被告製品の製造、使用、譲渡、貸渡、譲渡又は貸渡のための展示の差止、並びに不当利得金二八六六万二五〇〇円の内金二六七八万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日から支払済みに至るまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払いを求める。

二  請求の原因に対する認否

1  請求の原因1は認める。

2  同2は知らない。

3  3ないし5は否認する。

第三証拠関係

本件記録中の書証目録及び証人等目録記載のとおりであるから、これを引用する。

理由

一  請求の原因1の事実は、当事者間に争いがない。

二  成立に争いのない甲一号証によれば、請求の原因2の事実を認定することができる。

三  証人千葉賢の証言及び同証言により被告製品の写真であることが認められる甲第三号証ないし第五号証、同証言により被告製品(一)の本体及び保護柱であることが認められる検甲第一号証の一、二、被告製品(二)の本体及び保護柱であることが認められる同第二号証の一、二、被告製品(三)の上枠隅角部、下枠及び保護柱であることが認められる同第三号証の一ないし三によれば、被告は、被告製品を製造譲渡していたものと認められる。

四  右認定の本件考案の構成要件及び被告製品の構造によれば、請求原因4の事実を認定することができる。

五  証人千葉賢の証言及び同証言により真正に成立したものと認められる甲六号証によれば、被告が作成し税務署に提出した「法人の事業概況説明書」には、昭和61年10月から同62年9月まで一年間の被告の全製品の売上が合計一億一二一一万三〇〇〇円である旨記載されていること、被告の売上のうち約七〇パーセントが被告製品によるものであることが認められ、右認定の事実によると、右期間の被告製品の売上は七八四七万九一〇〇円であつて、これは、ほぼ原告の主張に合致するものであり、この事実に右証人の証言を総合すれば、請求の原因5のうち、被告製品の販売台数及び販売高を認定することができる。

六  前認定の本件実用新案権の内容及び証人千葉賢の証言を総合すれば、本件考案の実施料は、原告主張のとおり売上高の五パーセントと認めることができる。そうすると、被告の本件実用新案権侵害による利得額は、原告主張のとおり認定することができる。

七  以上のとおりであるから、原告の請求のうち、不当利得金の請求については、理由があるので(訴状送達の日の翌日が主文一掲記の日であることは、記録上明らかである。)、これを認容し、差止請求については、本件実用新案権の存続期間が既に終了していることが明らかであるから、これを棄却することとし、訴訟費用の負担について民事訴訟法八九条及び九二条但書、仮執行宣言について同法一九六条一項の規定を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 清永利亮 裁判官 設楽隆一 裁判官 長沢幸男)

<以下省略>

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